予想どおりに不合理

ここ数年いろんな形でNPOに関わってきているけども、活動を大きしようとして時に直面する難しさに対するヒントが「予想どおりに不合理」にあったので、多分NPOや本業以外に活動をしている人は読んでおいた方が良いかと思って紹介。

第4章「社会規範のコスト」で「社会規範が規則を作る世界」と「市場規範が規則を作る世界」について説明している。社会規範が規則を作る世界では友人や知人の頼み事や好意をベースにしていて、すぐにお返しをする必要はない。大抵ほのぼのとしている。一方、市場規範が規則を作る世界では対価や便益が求められ、シビアな世界となる。

NPOやその他の活動はだいたい社会規範が規則を作る世界でスタートする。お金になる/ならないではなく、何とかしたい、楽しみたい、やりたい辺りが起点となる。そして頼み事で活動する場合はモチベーションが高いので、徐々に活動は進んでいく。やがて様々な人から協力を得て少しづつ活動が大きくなってくる。ところが活動が大きくなってきたところで、お金の面にぶち当たる。それは拡大にともなって必要なインフラが大きくなってきた/事務処理などボランティアでモチベーションを保つには難しい作業が増えてきた/活動に専念したくなって活動そのもので生活費を稼げるようにしたいなどが理由に上げられる。

お金を意識し始めると急に「市場規範が規則を作る世界」になる。そうすると本業で活躍している人ほどモチベーションが急激にダウンしてくる。個々人が活動に対して対価を意識し始めるため、本業で活躍している人ほど他の活動で得られる対価が大きく、非営利な活動で経済的なインセンティブを得るのが難しいからである。また、一度市場規範を意識すると、社会規範には中々戻らない(社会規範から市場規範にいたるのは一瞬である)ので、元には戻りにくい。かくして、バラバラになったりメンバーが入れ替わったりする。

じゃあどうしたらいいかというと、良くは分からない。大事な点としては市場規範と社会規範は両立ができないので、どちらか一つにしておくのが良いのかと思う。サービスを提供している人から対価が期待できるのであれば、はじめから営利企業で突き進め、それが期待できない(だいたいはこっちだと思うけど)のであれば、社会規範をベースにして活動する。後者の場合は多分代表も含めて全員ボランティアで行うほうが良い。

ちなみに、社会規範は対価を意識しないからといって、頼りになりっぱなしでいいわけでは勿論無い。お礼は必要だし、プレゼントや他の活動といった形で報いる必要はある。ただ、現金ではゼッタイダメだという点と、プレゼントや他の活動など、現金を介さない形で報いている限りは社会規範をベースとした世界は続くという点が重要なポイントである。